米国財務省為替報告書 2017年04月公表分の直訳
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- ドナルド・トランプ氏大統領就任後、初めての米国財務省為替報告書。
- 文中、※はアセット・マネジメント・コンサルティング株式会社による注釈。
- 日本に関するパートのみ。
- 前回までの米国財務省為替報告書の直訳(アセット・マネジメント・コンサルティング会社による)
- 財務省(日本)の外国為替平衡操作(為替介入)推移
- 黒田総裁就任以降の日本銀行金融政策の変遷
- 監視リストで名指しされた国(Economy)のドルストレート為替レート
エグゼクティブサマリーから日本に関するパート(Page 1 ~ Page 3)
2015法規制(※米国財務省為替報告書(以降”報告書”)中、”2015 Act”( Trade Facilitation and Trade Enforcement Act of 2015))に従って、今回の報告期間において3つのクライテリア(※(1)米国との著しい二国間貿易黒字。少なくとも200億ドル(サービス収支除く)、(2)少なくともGDPの3パーセントに相当する重大な経常黒字、(3)持続的な一方向の為替介入。頻繁な外貨買入(ネットベース。外貨買い自国通貨売り)および過去12ヶ月間の合計でGDPの少なくとも2パーセント相当)全てを満たしている主要貿易パートナーは無かった事を米国財務省は報告する。
同様にして今回の報告書の分析に基き、2016年後半において1988年法規制(※報告書中、”1988 Act”)による為替操作の基準を満たす主要貿易パートナーは無かったことも結論する(※トランプ大統領は中国を為替操作国に認定すると公約していました)。
米国財務省はその通過措置を注視する必要有りと判断する主要貿易パートナーの監視リスト(※報告書中、”Monitoring List”)を作成している。
2015年法規制の3つのクライテリア中、2つが適合している国(※報告書中では”economy”)は監視リストに加えられる。
一度監視リストに加えられるとクライテリアと比較した実績の何らかの改善が持続的であり、一時的な一度限りの要因でないことを確認するために少なくとも2回連続で監視リストに加えられる。
さらに追加手段として例えその国が2015年法規制の3つのクライテリア中2つを満たしていない場合でも、米国の貿易赤字(※貿易輸入超)全体の相当かつ不均衡な割合を占めている主要貿易パートナーは監視リストに加え留められる。
今回の報告書で監視リストは以下の国からなる:中国、日本、韓国、台湾、ドイツおよびスイス(※前回報告書から一国の仲間も失いませんでした)。
日本は依然として需要の伸びが弱くそれが日本の貿易不均衡の一因となっており、輸出主導型経済成長への回帰を避けながら、内需を回復させ低インフレ率対策のために全ての政策手段を展開させる必要がある。
日本は米国との間に相当の二国間貿易黒字(※日本にとっては輸出超)を抱えており、貿易黒字(※”goods surplus”)は690億ドルを記録している。
2016年の日本の経常黒字はGDPの3.7パーセントに当り2015年の3.1パーセントから大きく増加しており、2010年以降で最大の年間黒字額を記録している。
日本は為替市場において5年以上介入を行っていない(※財務省(日本)の外国為替平衡操作(為替介入)推移)。
米国財務省は大規模で自由な為替市場を期待(※報告書中、”expectation”)しており、為替介入は極めて例外的な状況の場合のみに適切な事前協議を伴って行われるべきである。
国内経済活動と内需成長の弱さが日本の貿易不均衡の一因である事を考慮すると、日本の当局は緩和的金融政策と柔軟な財政政策そして 労働市場強化、生産性向上そして長期的経済見通しの改善に注力した構造改革継続遂行を完遂することが重要である。
セクション1:世界経済と外部の動向
主要貿易パートナーの経済動向から日本に関するパート(Page 15 ~ Page 17)
数十年に渡り日本は一貫して経常黒字国であり、2011年から2015年の貿易収支は赤字(※輸入超。日本の国際収支)であったが2016年には黒字(※輸出超)に戻った。
日本の経常黒字は2016年にGDPの3.7パーセントに当たる1830億ドルへと拡大し、2015年の3.1パーセントから大きく増加し2010年以降の最大年間黒字を記録した。
経常黒字の殆どは-貿易収支はますます重要な推進力になってはいるが-日本の海外所得ネット黒字が寄与している。
日本の季節調整済み貿易収支(貿易・サービス収支)は2015年後半に黒字に転換し2016年には輸入減により拡大した。
2016年中頃に貿易収支はピークを迎えたが、日本は2011年の東日本大震災以来見られなかった黒字を記録し続けている。
2016年の日本の対米国の貿易黒字は690億ドルであり2015年とほぼ同じである(※参考U.S. Trade In Goods By Country)。
日本の対米国のサービス収支は赤字であり、日本の二国間貿易全体の黒字(貿易およびサービス収支)は2016年が560億ドルで2015年の550億ドルから僅かに増加した。
米国と日本の二国間貿易の大きな不均衡の持続に米国財務省は憂慮(※報告書中、”concerned”)している。
2016年末の米ドル-日本円為替レートのレベルは1年を通して大きな変動はあったが年初と実際上変化はなかった。
3月の会計年度末の日本への国外留保利益資金回帰と6月のイギリスの国民投票後の避難先としての日本円買いの結果、2016年8月中旬に日本円の対米ドル為替レートは1ドル99円と最高値を記録した(※報告書中、2005年12月を100円とした場合の実質実効為替レート(REER)、名目実効為替レート(NEER)およびスポットレートの時系列チャートが掲載されています。なお2016年8月18日東京市場ドル円スポットレート最安値は1ドル99.65円(日本銀行Webサイトより引用))
11月の米国大統領選挙まで日本円の対米ドル為替レートレンジは100円から105円であったがその後対米ドルで円安に振れた。
2016年、実質実効ベースで日本円は6.3パーセント円高に振れた。
2017年最初の2ヶ月では1.0パーセント円高に振れた。
円が過大評価されている、とする根拠は殆ど無い。
実質実効ベースの日本円は過去20年間の平均よりも20パーセント弱く、 IMFの最新評価では日本円は中期的なファンダメンタルと概ね矛盾は無いとしている。
日本は5年以上為替市場に介入していない。
米国財務省は大規模で自由な為替市場を期待(※報告書中、”expectation”)しており、為替介入は極めて例外的な状況の場合のみに適切な事前協議を伴って行われるべきであり、日本はG7およびG20でのコミットメントに沿うべきである。
日本の実質GDPは5年連続で成長しているが 平均成長率は1.2パーセントだけである。
過去3年間の内需成長率は特に弱く平均は0.5パーセントでしかない。
日本の当局はデフレからの確実な脱却に挑戦し続けている。
2016年に日本銀行は金融政策の枠組みをマネタリーベース拡大からイールドカーブコントロールへと転換し、10年もの日本国債利回りと短期金利をターゲットにし始めた。
日本銀行はまたインフレ期待をさらにサポートするためにオーバーシュート型コミットメントをも導入した。
最近のエネルギー価格上昇は総合消費者物価指数上昇の一因となったが、充分なディマンドプルインフレを引き起こすには国内経済は未だ強さが不足している。
財政面では2016年5月に政府は予定されていた更なる消費税率引き上げを2019年10月まで延期した。
8月には政府はGDPの1.3パーセントに当たる刺激策を公表した。
IMFはこの刺激策により2016年と2017年には適度な財政刺激をもたらすと推定している。
弱い需要成長と例外的な低インフレ率を前提すると、当局は全ての政策を利用してそれら傾向と取り組むことが重要であリ続ける。
これは緩和的金融政策と柔軟な財政政策そして労働市場、生産性向上および長期的な経済見通し改善に注力した構造改革の継続的遂行の完遂を意味する。